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宿泊業界で働く人の心に残るエピソード ―お客さま編―

2024.04.02

宿泊業界で働くと日々、たくさんのお客さまとの出会いがあります。実際に宿泊業界で働く人に印象的なエピソードを聞いてみたところ、それぞれ忘れられないお客さまとの思い出が続々。今回はそんなエピソードの中から、特に深く心に残る体験を教えていただきましたのでご紹介します。

婚約のお祝いに、スタッフ全員でフラッシュモブのサプライズ!

最初にご紹介するのは、旅館で仲居をされていたY.N.さんのエピソード。婚約の記念に宿を訪れたお客さまへ、スタッフ全員参加でサプライズ演出のお祝いをしたお話です。

「スタッフ全員を巻き込んで、フラッシュモブ(前触れなく突然、ダンスや演奏などを行うパフォーマンス)でお祝いしました。私にとっては初めての大きなお祝い事で、ドキドキ。

お食事処でお客さまがデザートを食べ終えた後、廊下の電気をすべて消して、バージンロードに見立てた赤い布を敷いて準備。その上をお二人で歩いていただき、玄関に到着して記念撮影のタイミングでフラッシュモブがスタート! 私がSuperflyの『愛をこめて花束を』を歌い出すと、曲にあわせてお客さまのフリをしていたほかの仲居やスタッフ、最後には料理人たちまで駆けつけお二人をお祝いしました。

サプライズが終わるころには、ボロボロ涙を流しながら喜んでいただき、その後もお二人の節目には必ず宿を訪れていただきました。お客さまの転勤でそれは途切れてしまいましたが、今でもお手紙で近況の報告のやり取りをするなど、生涯忘れることのないお客さまです」

厳しい常連のお客さまからのサプライズに思わず涙

続いては逆にお客さまからサプライズをしていただいた経験が特に印象に残っているというA.K.さん。当時のA.K.さんはビジネスホテルのフロント係からマネージャーになったばかりだったと言います。

「日本人なら知らない人はいない超有名企業の役員をされていたお客さま。ホテルが会社の近くということもあり月1~2回ほどはご利用いただく常連のお客さまでした。普段はとても良い方ですが厳しい面もあり、客室清掃やスタッフの不手際をご指摘いただくことも多くありました。

ある日、マネージャーになりたての私はお客さまからお怒りの内線をいただき、お部屋にお伺いすることに。その際、私と私の服装がいつもの制服からスーツに変わったことに気付いたお客さまに『君はフロントの子だよね? マネージャーになったの?』と質問され、昇進した旨をお話ししました。そして、その滞在時に気付かれた点に関して厳しいご指摘をいただきました。

その翌日、再度お客さまから『マネージャーを呼べ』と内線電話をいただき、重い足取りでお部屋に向かいました。ノックすると中からは『どうぞ』という不機嫌な声。緊張しながら入室すると『昇進おめでとう!』と花束をいただきました。さらに『若い女性が上に立つのは苦労が多いと思うけど、頑張ってね!』という激励のお言葉も。それまでの緊張の糸が切れた私はその場で嬉し泣きし、お客さまを困らせてしまいました」

思い出に残る修学旅行に。お礼の手紙に調整の苦労も吹き飛ぶ

修学旅行などでホテルを訪れる学生の方も多くいます。T.U.さんのお話はそんな修学旅行生とのエピソードです。当時、東京都内のビジネスホテルでフロントスタッフをしていたT.U.さん。そのホテルは小学生から高校生まで多くの修学旅行生が利用していました。

「修学旅行は、宿泊の1年以上前から予約が入り、当日までに学校関係者の下見やアレルギーの確認、夕朝食会場のレイアウト、宿泊スケジュールや部屋割り、工程表の確認、実際の宿泊人数の確認と泊数の確定…と、とにかく多くの事前調整が必要です。宿泊当日も生徒さんたちの前での挨拶や館内案内などを行います。滞在中も体調を崩す生徒さんがいたり、急な変更や対応が生じたりすることもあり一切気が抜けません。そして滞りなく滞在を終えてチェックアウトした際には、大型バスが見えなくなるまで手を振ってお見送りします。

多くの調整事があり大変な面もありますが、後日、先生方や生徒さんから『楽しい修学旅行になりました!』というお礼のお手紙をいただくと、そんな大変さはどこかに吹き飛んでしまいます。そんな時が特にこの仕事のやりがいを感じる時でもあります」

無我夢中で業務にあたった数日間。お客さまの言葉で報われた

T.H.さんの忘れられないエピソードは、東日本大震災の際の体験。当時、宿泊者のほとんどが外国からのお客さまというリゾートホテルでフロントスタッフをしていたT.H.さん。その時必死に動いた経験とともに、その後にお客さまからいただいたねぎらいの言葉が今も深く心に残っていると言います。

「地震の発生直後、特にあまり地震の経験のない外国人の方々は恐怖でパニックになっていました。足がすくんだり、腰が抜けたりして客室から脱出できないお客さまも多く、エレベーターが使えない中、何度も階段を往復しながら救助し、安全な場所へと避難できるよう誘導し続けたことは、今でも忘れられない経験です。

無事に避難した後も、事後対応やさまざまな事務処理に追われ、私を含めスタッフはみんな疲労困憊でした。そんな中、お客さまから『とてつもない大災害の中、冷静な避難指示と救助活動をしてくれてありがとう!』というお言葉をいただき、体はボロボロでしたがとても救われた気持ちになりました」


どれも心温まる素敵なエピソードでしたね。このようなお客さまとの出会いが宿泊業界で働く大きな魅力のひとつかもしれませんね。

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